突然立ちはだかった「高血圧」という新たな苦しみ
好酸球性胃腸炎の度重なる入退院、群発頭痛の激痛発作、重症喘息による呼吸困難――。
これまで数々の難病や持病と向き合ってきましたが、ある時期、それらの症状に輪をかけて私を苦しめたのが「血圧の異常な高騰と乱高下」でした。
普段は特別に血圧が高かったわけではないのに、体調を崩すとともに測定値が急上昇。上が160、170を超え、激痛のピーク時にはそれ以上の数値を叩き出すようになりました。
後頭部や首筋がドクドクと激しく脈打ち、顔がカッと火照る。胸の奥が締め付けられるような激しい動悸と息苦しさに襲われ、「このまま血管が破裂してしまうのではないか」という恐怖感で眠ることもできなくなりました。
なぜそこまで血圧が跳ね上がってしまったのか、そしてどのようにしてその苦境を乗り越えてきたのか。その経緯をありのままに記録しておこうと思います。
なぜここまで血圧が跳ね上がったのか? 4つの複合要因
後から主治医と振り返り、自分自身の身体と向き合って分かったのは、私の高血圧は単なる加齢や生活習慣によるものではなく、「複数の持病と治療薬が複雑に絡み合った結果」だったということです。
1. 激痛による交感神経の極度な暴走
最大の引き金は、群発頭痛や好酸球性胃腸炎の「激痛」でした。
群発頭痛は「自殺頭痛」と称されるほどの猛烈な痛みが眼奥をえぐります。また胃腸炎の急性期には、内臓を雑巾絞りにされるような激しい腹痛が何時間も続きます。
人間は耐え難い痛みに直面すると、自律神経のうち交感神経が極度に興奮し、アドレナリンなどの昇圧ホルモンが大量に分泌されます。
その結果、血管がギュッと収縮し、心拍数が跳ね上がり、血圧が爆発的に上昇します。
「頭が痛いから血圧が上がっているのか、血圧が異常に高いから頭が割れそうに痛いのか」――。
もはや原因と結果の区別がつかない、地獄のような負のスパイラルに陥っていました。
2. 喘息の低酸素状態とサルタノールの影響
重症喘息の発作が起きると、気道が狭窄して体内に十分な酸素が取り込めなくなります。
身体は酸素不足を補おうとして心臓に強い負荷をかけ、血圧を上げて血液を無理やり巡らせようとします。
さらに、気道を広げるために救急吸入薬である「サルタノール(β2刺激薬)」を使いますが、この薬は気管支を拡張する一方で、どうしても心拍数を上げ、動悸を誘発する作用があります。
息苦しさに加えてバクバクと暴れる心臓、そして急上昇する血圧に挟まれ、身体のやり場がない苦しさを味わいました。
3. ステロイド治療による体液貯留
好酸球の暴走を抑えるために、急性期にはステロイド(プレドニン等)の全身投与が欠かせません。
しかしステロイドには、体内に塩分(ナトリウム)と水分を溜め込み、血管の緊張を高めるという明確な副作用があります。炎症を鎮めるために必要な治療でありながら、血圧にとっては大きな負担となっていました。
4. 睡眠時無呼吸(SAS)による夜間・早朝の高血圧
さらに追い打ちをかけたのが睡眠時無呼吸症候群でした。
睡眠中に呼吸が止まると、無呼吸のたびに重度の低酸素状態に陥り、脳が覚醒して交感神経が強く緊張します。本来なら血圧が下がるはずの夜間から早朝にかけて血圧が跳ね上がり、朝起きた瞬間から頭重感と強い疲労感に襲われていました。
血圧計の数値に怯える「精神的な悪循環」
身体的な要因以上に私をすり減らしたのが、「血圧測定に対する恐怖」でした。
体調が悪くて動悸がするたびに、「今、血圧はどれくらいだろう」と不安になって上腕式血圧計を巻く。
カフがプシューと加圧され、測定結果に「175 / 105」といった異常値が表示される。
それを見た瞬間にサッと血の気が引き、「どうしよう、脳出血を起こすかもしれない」「倒れたらどうしよう」と激しい恐怖とパニックに襲われます。
そして、その恐怖と緊張そのものが交感神経をさらに刺激し、5分後に測り直すと今度は「185」に上がっている――。
完全に「血圧計ノイローゼ」のような状態でした。血圧計を見るだけで心臓が早鐘を打つようになり、数値を測ること自体が血圧を上げる原因になっていたのです。
実際の血圧測定ログ(2026年9月下旬〜10月)
実際にiPhoneのヘルスケア(Withings血圧計連携)に記録されていた、最も苦しかった時期の測定ログがこちらです。
| 測定日時 | 最高血圧 (収縮期) | 最低血圧 (拡張期) | 脈拍 | 臨床的な判定 |
|---|---|---|---|---|
| 09/29 07:35 | 169 | 138 | - | 🚨 III度高血圧(下の血圧が異常高値) |
| 09/30 07:51 | 164 | 108 | 93 | ⚠️ II度高血圧 / 頻脈 |
| 10/01 22:41 | 148 | 93 | 82 | I度高血圧 |
| 10/02 07:41 | 160 | 122 | 99 | 🚨 III度高血圧 |
| 10/02 12:10 | 158 | 139 | 95 | 🚨 下の血圧 139(激しい血管抵抗) |
| 10/03 09:17 | 183 | 116 | 99 | 🚨 180超えスパイク |
| 10/04 19:17 | 186 | 130 | 91 | 🚨 期間中最大値(186 / 130) |
| 10/05 07:28 | 175 | 132 | 99 | 🚨 早朝モーニングサージ |
| 10/06 07:25 | 165 | 146 | 107 | 🚨 下の血圧最大(146)、脈拍107 |
| 10/06 23:36 | 142 | 91 | 78 | 改善傾向 |
データから判明した過酷な現実
- 拡張期血圧(下)の異常な跳ね上がり: 最低血圧が日常的に 120〜146 mmHg に達していました。通常、拡張期血圧が110を超えると即座にIII度高血圧と判定されますが、130〜140台という極限の末梢血管収縮が起きており、これが脳や頭部への激烈な圧迫感の正体でした。
- 早朝モーニングサージ(朝の平均 166.4 / 122.3 mmHg): 起床直後の測定で連日160〜175を連発しており、夜間の無呼吸や起床時の交感神経刺激が如実に反映されていました。
- 頻脈との連動(脈拍107): 拡張期146を記録した際には脈拍も107まで上昇しており、交感神経の暴走と激痛・不安による身体のパニックがデータとして客観的に裏付けられています。
降圧薬「アジルサルタン(アジルバ)」の導入と調整
このままでは脳や心臓、腎臓が持たないということで、主治医と相談して降圧薬の導入に踏み切りました。
処方されたのが、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)の中でも強力で持続性の高い「アジルサルタン(商品名:アジルバ)」でした。
導入当初のふらつきと葛藤
アジルバを飲み始めた当初は、それはそれで身体の順応に苦労しました。
血圧を急激に下げる薬であるため、発作のない穏やかな時間帯には、血圧がストンと下がって強い立ちくらみやふらつき、脱力感が出ることがありました。
「痛みのピーク時には血圧が突き抜けて高いのに、痛みのない時には下がりすぎてフラフラする」という、血圧の激しいジェットコースターに振り回され、薬の用量や飲むタイミングの調整には主治医と慎重に試行錯誤を重ねました。
ベースラインを守ることの重要性
しかし、アジルバを継続して服用していくうちに、少しずつその恩恵を実感するようになりました。
血管を収縮させる体内物質(アンジオテンシンII)を24時間にわたってブロックしてくれるため、「痛みが起きても、以前のように危険な高血圧域まで突き抜けにくくなった」のです。
極端な血圧の天井が抑えられたことで、頭部へのドクドクとした圧迫感や破裂しそうな恐怖感が和らぎ、心臓への負担が明らかに軽くなりました。
苦しみを経て学んだ、現在の向き合い方
激しい高血圧に苦しみ、試行錯誤を重ねた経験から、今の私は以下のルールを大切にしています。
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「血圧は身体の悲鳴のバロメーター」と受け止める
血圧そのものが悪者なのではなく、激痛、息苦しさ、炎症、薬の作用に身体が必死に応答した結果として血圧が上がっていたのだと理解しました。数値を力づくで気にするのではなく、「今、身体のどこが悲鳴を上げているのか」に目を向けるようになりました。 -
測り直しを繰り返さない・パニックを避ける
高い数値が出た直後に何度も測り直すのをやめました。高い数値が出たときは、そっと血圧計を外し、部屋を薄暗くして深呼吸を繰り返し、まずは痛みの頓服薬を飲んで横になる。身体が落ち着いてから測れば、血圧も自然と下がってきます。 -
痛みの早期コントロールと基礎治療の徹底
血圧を跳ね上げさせない最大の予防策は、「激痛を我慢せず、発作の初期段階で抑え込むこと」です。頭痛や腹痛の頓服薬を適切なタイミングで使うこと、そしてアジルバを毎日きちんと服用して血管の基礎体力を守ることが、一番の防御になっています。
結び
複数の難病や慢性疾患を抱えていると、一つの病気の悪化がドミノ倒しのように他のバイタルサインを崩し、予想もしなかった高血圧のような新たな苦痛を引き起こします。
「痛いだけでも限界なのに、血圧まで高くて動悸が止まらない」という時期は、本当に精神的にも追い詰められ、孤独で苦しい時間でした。
もし同じように、持病の痛みや喘息、薬の副作用による急激な高血圧に怯え、苦しんでいる方がいれば、「痛みのコントロールと降圧薬の適切な併用で、必ず波は落ち着かせることができる」ということをお伝えしたいです。
身体が発しているサインを主治医に包み隠さず伝え、一つひとつの要因を丁寧に解きほぐしていくことが、平穏な日常を取り戻すための確かな一歩になると信じています。
